生後0ヶ月 赤ちゃんの発達と関わり方

生まれてすぐの赤ちゃんは無防備で、何をするにもママのお世話を必要とします。
しかし、そんな赤ちゃんも無力な存在ではなく「自ら育つ」様々な力を持っています。そのことを心にとめ、一人一人の成長に合わせた関わりをもつことが大事です。

ここでは、発達心理学に基づいた生まれたての赤ちゃんの発達と、具体的関わりかたををご紹介します。

 

生後0ヶ月の赤ちゃんの特徴

生後0ヶ月の赤ちゃんは、睡眠と覚醒が交互に現れます。
空腹時やおむつが汚れたり、また暑さ寒さなどでも目覚めて不快を訴えて泣きます。こうして出来る表現を駆使してママとのコミュニケーションをスタートさせるのです。

胎児期から五感や脳も発達している

お腹の中にいる間も、どんどん成長していきます。
妊娠20週前後にはDNA増加の第一ピークを迎え、ニューロン(神経細胞)は急激に増加します。

ニューロン自体は生まれたときにすでに完成されていますが、それぞれの細胞は繋がっていません。この細胞と細胞をつなぎ、情報が流れる回路を完成させるのが「シナプス」です。

 

真ん中の図で、丸いイヤホンのようなものが接合している部分がシナプスです。

この時期に使われなかった(シナプス形成されなかった)ニューロンは細胞死して適正な数になります。

また「スキャモンの発達・発育曲線」と呼ばれる体の各部位がどのように発達していくかを表すグラフを見ると、体の発育(一般型)がゆっくりなだらかな成長をするのに対して、脳の発達(神経型)は生後急激に発達し、3歳までに80%、6歳には90%が完成すると言われています。
つまり、育脳のためには、この時期にしっかりと働きかけることが、とても大切なのです。

 

また、胎児期には五感もどんどん発達していき、生まれる頃には多種類の感覚が機能しています。

そのためこの時期から、語りかけやリラックスして好きな音楽を聴いたりすることで、お腹の赤ちゃんもしっかり伝わります。マタニティヨガ等もいいかもしれませんね。

出産直後の母子にとって最も必要なこととは

出産直後の赤ちゃんが最も必要とし望むものは、睡眠でも食事でもなく
「優しい愛撫や語りかけ!」


赤ちゃんにしてみると、ある日ママのお腹から出てみると、
そこは今までいた空間とは別世界。
不安になるのは当然ですよね。
そこに、やさしく話しかけてくれるパパやママがいて初めて
安心できるのです。

でも、この優しい愛撫や語りかけは赤ちゃんに限ってのことではありません。実はママにとっても、とても重要な意味があるんです。

親が親になる・・・生まれたての我が子を抱っこすることにより、目の前にいる無防備で保護を必要とする存在に「私はこの子の親である」という安心と自信が得られるようになります。
そして可愛がれば可愛がるほどボンディング(情緒的絆)が強くなっていきます。

また、育児ホルモン(プロラクチンやオキシトシン)の分泌により、精神安定効果が得られ、また、産後の回復も早くなります。

これらは、乳首を吸ってもらう刺激によって多く分泌されますが、触れ合うことでも分泌されます。


そしてこれは、母親に限ったことではなく、父親にも分泌され、その後の育児協力も得られやすくなるので、初めが肝心(生後1ヶ月くらいがボンディング形成にとても重要な時期と言われています)で積極的に関わる機会をパパにも与えてくださいね。

原始反応も生まれながらに備わっている

原始反射とは、赤ちゃんが生まれながらに備わっている反射で、身体機能などは未熟な状態で生まれてくる赤ちゃんが、外界に適応して生きていくのを支援する役割を果たすと考えられています。刺激に対して自分の意志とは関係なく反射的に起こす動きです。

たとえば、教わらなくても生まれながらに母乳を飲むことができます。これは哺乳反射によって、乳首を探して吸い付き、分泌された母乳を飲むという物です。

その他、モロー反射、バビンスキー反射、ギャラン反射などがあります。

手拳把握反射は、赤ちゃんの手のひらに物が触れた時、握ろうとすることで、反射とはいえとても可愛いものですよね。

そうして、反射を繰り返すことにより中枢神経が発達して統合され、より高次の脳(大脳皮質)になり反射は抑制されて自分の意思で身体を動かすようになります。

発育・発達目安

男の子 身長 49.0cm 体重 3,000㌘
女の子 身長 48.5cm 体重 2,940㌘

視力 0.01(30㎝くらいで顔や丸などの単純な形。白黒色がぼんやりみえるくらい)

聴力 音の認識はまだないが、音には反射する(モロー反射)

ここに表した、特徴や発育・発達はあくまで目安であり、成長の度合いはひとりひとり大きく異なります。参考程度にとどめ、あまり気になる時はかかりつけ医などに相談してみましょう。

生後0ヶ月の赤ちゃんー発達課題と遊び

乳児期(0歳~1歳半ころ)の発達課題は基本的信頼感です。そして対極にあるのが不信感です。

発達課題ー基本的信頼感とは

では、基本的信頼感とはどういうものでしょうか?
それは、泣いても、時には乳首を噛んだとしても、それを意に介さず愛情をそそいでくれて、ありのままの自分を受け入れてくれる人がいるという「他人への信頼感」と、自分は他人から大切にされるに足りる存在であるという「自分への信頼感」です。

自分を肯定的にとらえ、外界は信頼できるという感覚をもつこと、それが「基本的信頼感」です。

基本的信頼感を獲得するためには

愛情をそそぎ世話をしてくれて、甘えを受容してくれる。その経験の積み重ねで外界に不安なことがあっても守ってくれる安全基地として養育者への信頼を抱き、しだいに基本的信頼感が獲得出来ます。
反対に泣いても反応してくれない、笑顔もなく無表情でお世話をする。叱ってばかりいる。
こういうことが続くと、赤ちゃんは泣いても無駄、泣いたら叱られると次第に泣かなくなり、ついにはサイレントベイビーになってしまう可能性があります。そして、不信感に支配されてしまいます。

でも、気分が落ち込んでいたり、体調がすぐれなかたりすると、ついイラッとして叱ってしまうこともありますよね。それが直ぐに不信感に支配されてしまうと言うことではありません。

この時期の発達課題を超えて獲得出来るもの

現実、すべての要求を満たすことは不可能ですし(逆に完璧すぎる行動や思考はその後の母子関係に悪影響を及ぼすとされています。)社会においても全てが満たされるということはありません。
そのため、この時期に欲求が満たされない状態に置かれて不信感を抱くことも大切だと考えられています。
赤ちゃんがいつも自分の欲求がすぐに満たされない状態において、「不信感」を抱きつつも、ママ(養育者)から要求を満たしてもらい、また、ありのままの自分を受け入れてくれる経験によって、不信感を抱く経験を上回る信頼感を持つことが重要だとされています。

そして、それが達成された時「希望」というより良く生きるための力が獲得されると考えられています。

大人になっていくにしたがって、うまくいかないことが続いたり、人に裏切られたり、様々な不信感を抱くようなことがおこりますが、その気持ちを昇華し、「また明日から頑張ろう!」と思える心を育ててあげることが大切です。

「この時期のポイントは、笑顔と声かけとスキンシップです!」

 

まずは環境づくり

とはいえ、この時期はママも出産という大仕事をして、身体の中はボロボロです。
たとえ自分自身が大丈夫と思っても、想像以上に身体はダメージを受けています。

出産後6週間~8週間の産褥期は家事も最小限にし、出来るなら周りの人の手を借りて、無理のないように過ごさなくてはいけません。

また生後0ヶ月~3ヶ月は、赤ちゃんも胎内から外界に出て脳が配線を急ピッチでしている大切なとき。無理な働きかけはNGです。
お出かけやイベントなども最小限にしましょう。

ここでは、簡単にできる赤ちゃんとの遊びを紹介したいと思います。

スキンシップ&体遊び

この時期は無理や無理矢理は禁物ですが、一日中赤ちゃんを静かな部屋で生活させる必要はありません。

家族の声やにおいになれるよう、抱っこしてあげたり、話しかけてあげたり、また日中はリビングなどでお世話したりと、それだけでも赤ちゃんにとっては刺激です。
お散歩しないまでも、一日一回くらいは窓を開けて換気するだけでも外のにおいや音を感じられます。

そして授乳時などお世話をするときも、まず
「おなかすいたね~」最後には「おなかいっぱい~」
など話しかけます。そうすることで、これから始まることをだんだん予測できるようになって学習していきます。

おむつ替えのときは、毎回でなくてもいいので、少しのあいだおむつを外した状態で腰から足先までさすってあげたり、優しく足の曲げ伸ばしをしたりして、スキンシップと体遊びを取り入れてみて下さいね。
その時も優しく笑顔で語りかけながらがポイントです。真剣になりすぎて、怖い顔になっていては効果半減どころかマイナスになりかねません。

お部屋の中を抱っこしてゆっくり散歩もおすすめです。
部屋の中を「ここがリビングだよー」「これはコップだよー」などと案内をしたり、窓から見える景色に
「風邪がつよいね~」
などいっぱい語りかけてあげて下さいね。

この時期の赤ちゃんの視力は0.01程度、30㎝くらいの距離で白黒のはっきりした色のものがぼんやり見えています。
顔を近づけてやさしく語りかけるのがポイントです。

まとめ

子育ては、これをしたら間違いないとか、良いと言われるものを全部したから良いというものでなく、親がまず子育ての軸を持つこと。そして溢れている様々な情報の中から取捨選択をし、自分達なりの子育て方針を持つことが大事です。

いくらいいと言われていることでも、やってみて「何かちがうな」と感じたり、することがストレスになったりするのは、もしかしたら合っていないのかもしれません。
人それぞれ性格や好みが違うように、親や赤ちゃんもそれぞれ同じではありません。

子育ての基本は赤ちゃんと向き合うこと。一方通行ではいけません双方向のやりとりが発達の観点からしても大事です。
それにはまず、自分と向き合い、赤ちゃんと向き合ってよく観察してみて下さいね。

そして、生後0ヶ月の赤ちゃんとママには無理は厳禁、ゆったりとした気持ちでお世話をし、赤ちゃんをよく観察して、赤ちゃんからの発信に反応してあげて下さい。

また、産後うつかな?と感じているママは早めに家族や友人に助けを求めたり、地域の子育て支援センターなどに相談してみて下さいね。

最後に私がインストタクターの勉強をしていて出会った言葉を贈ります。

ほどほどにいい子育て、ほどほどにいい母親      byウィニコット

頑張っているママほど、一生懸命になりすぎて自分を追い込んだり完璧を求めたりしがちです。
”ほどほど”を目指して、楽しく子育てしていきましょうね!